法令・実務メモ
国内
<商標>商品形状自体が識別力を有するとした審決例
不服2003−8222(商標登録第4925446号)
出願人:シェフン コーポレイション(シアトルUSA)
(パリ優先権)
商標:
指定商品:
第21類「調味料または香辛料用挽き器(電気式のものを除く)」
判断(抜粋):
本願の指定商品を取り扱う業界においては、通例、円筒状又は該形状にハンドル等を設けた、いわゆる「こしょう挽き器」等が一般的に流通されており、該円筒形状の一部又はハンドル等を回転させることによって、円筒内に格納した香辛料等が細かく挽かれ、用途に応じて日常使用されている。
(これに対して)本願商標は、これが一見して直ちに、いかなる商品の形状を表し、また、いかなる機能を有するものであるかを認識、理解し得ないものであり、その指定商品の用途・機能からみて予想をし得ない特異な特徴を有し、通常、採用し得るこの種商品の形状の範囲を超えていると認識し得るものとみるのが相当である。
また、本願商標は、その指定商品について、請求人(出願人)若しくは同人の関係者により使用されており、この種商品が一般的に採用している形状とその構成の軌を一にしない、あたかも「うさぎが耳を立てた状態の頭部を模した形状」として、需要者の間に相当程度認識されているものと認め得るところである。
してみれば、本願商標は、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品自体の形状が特定人の出所を表示する、自他商品の出所識別標識として理解するものというべきである。
<特許>インクカートリッジの再生品を特許権侵害と認めた事件
H18. 1.31知財高裁 平成17(ネ)10021 特許権 民事訴訟事件
(原審:東京地裁平成16年(ワ)第8557号)
<判決抜粋>
1.国内販売分の控訴人(キヤノン)製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴人製品について物の発明(本件発明1)に係る本件特許権に基づく権利行使をすることの許否
物の発明に係る特許権の消尽
特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内において当該特許発明に係る製品(以下「特許製品」という。)を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達したものとして消尽し,もはや特許権者は,当該特許製品を使用し,譲渡し又は貸し渡す行為等に対し,特許権に基づく差止請求権等を行使することができないというべきである(BBS事件最高裁判決参照)。
しかしながら,(ア) 当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(以下「第1類型」という。),又は,(イ) 当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(以下「第2類型」という。)には,特許権は消尽せず,特許権者は,当該特許製品について特許権に基づく権利行使をすることが許されるものと解するのが相当である。
そして,第1類型に該当するかどうかは,特許製品を基準として,当該製品が製品としての効用を終えたかどうかにより判断されるのに対し,第2類型に該当するかどうかは,特許発明を基準として,特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされたかどうかにより判断されるべきものである。
なお,原審は,特許製品に施された加工又は交換が「修理」であるか「生産」であるかにより,特許権侵害の成否を判断すべきものとした。
しかし,このような考え方では,特許製品に物理的な変更が加えられない場合に関しては,生産であるか修理であるかによって特許権に基づく権利行使の許否を判断することは困難である。また,この見解は,「生産」の語を特許法2条3項1号にいう「生産」と異なる意味で用いるものであって,生産の概念を混乱させるおそれがある上,特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合であっても,当該製品の通常の使用形態,加えられた加工の程度や取引の実情等の事情により「生産」に該当しないものとして,特許権に基づく権利行使をすることが許されないこともあり得るという趣旨であれば,判断手法として是認することはできない。
まず,第1類型にいう特許製品が製品としての本来の耐用期間が経過してその効用を終えた場合とは,特許製品について,社会的ないし経済的な見地から決すべきものであり,(a) 当該製品の通常の用法の下において製品の部材が物理的に摩耗し,あるいはその成分が化学的に変化したなどの理由により当該製品の使用が実際に不可能となった場合がその典型であるが,(b) 物理的ないし化学的には複数回ないし長期間にわたっての使用が可能であるにもかかわらず保健衛生等の観点から使用回数ないし使用期間が限定されている製品(例えば,使い捨て注射器や服用薬など)にあっては,当該使用回数ないし使用期間を経たものは,たとえ物理的ないし化学的には当該制限を超えた回数ないし期間の使用が可能であっても,社会通念上効用を終えたものとして,第1類型に該当するというべきである。
第1類型のうち,前者(上記(a))については,特許製品につき,消耗部材(例えば,電気機器における電池やエアコンにおける集じんフィルターなど)や製品全体と比べて耐用期間の短い一部の部材(例えば,電気機器における電球や水中用機器における防水用パッキングなど)を交換し,あるいは損傷した一部の部材につき加工又は交換をしたとしても,当該製品の通常の用法の下における修理であると認められるときは,製品がその効用を終えたということはできない。これに対し,当該製品の主要な部材に大規模な加工を施し又は交換したり,あるいは部材の大部分を交換したりする行為は,上記の意義における修理の域を超えて当該製品の耐用期間を不当に伸長するものというべきであるから,当該加工又は交換がされた時点で当該製品は効用を終えたものと解するのが相当である。この場合において,当該加工又は交換が製品の通常の用法の下における修理に該当するかどうかは,当該部材が製品中において果たす機能,当該部品の耐用期間,加えられた加工の態様,程度,当該製品の機能,構造,材質,用途,使用形態,取引の実情等の事情を総合考慮して判断されるべきものである。また,主要な部材であるか,大部分の部材であるかどうかは,特許発明を基準として技術的な観点から判断するのではなく,製品自体を基準として,当該部材の占める経済的な価値の重要性や量的割合の観点から判断すべきである。
そして,特許権の消尽が,特許法による発明の保護と社会公共の利益の調和との観点から認められること(BBS事件最高裁判決参照)に照らせば,特許権者の意思によって消尽を妨げることはできないというべきであるから,特許製品において,消耗部材や耐用期間の短い部材の交換を困難とするような構成とされている(例えば,電池ケースの蓋が溶着により封緘されているなど)としても,当該構成が特許発明の目的に照らして不可避の構成であるか,又は特許製品の属する分野における同種の製品が一般的に有する構成でない限り,当該部材を交換する行為が通常の用法の下における修理に該当すると判断することは妨げられないというべきである。その点にかんがみれば,第三者による部材の加工又は交換が通常の用法の下における修理に該当するか,使用回数ないし使用期間の満了により製品が効用を終えたことになるのかは,特許製品に関する上記の事情に加えて,当該製品の属する分野における同種の製品が一般的に有する機能,構造,材質,用途,使用形態,取引の実情等をも総合考慮して判断されるべきものである。
さらに,後者(上記(b))については,使用回数ないし使用期間が一定の回数ないし期間に限定されることが,法令等において規定されているか,あるいは社会的に強固な共通認識として形成されている場合が,これに当たるものと解するのが相当である。したがって,単に特許権者等が特許製品の使用回数や使用期間を制限して製品にその旨を表示するなどしただけで,当該制限に達することにより製品がその効用を終えたことになるものではない。
次に,第2類型は,上記のとおり,特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされたことをいうものであるが,ここにいう本質的部分の意義については,次のように解すべきである。
特許権は,従来の技術では解決することのできなかった課題を,新規かつ進歩性を備えた構成により解決することに成功した発明に対して付与されるものである(特許法29条参照)。すなわち,特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための,従来技術にはみられない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的構成をもって公開した点にあるから,特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核を成す特徴的部分をもって,特許発明における本質的部分と理解すべきものである。特許権者の独占権は上記のような公開の代償として与えられるのであるから,特許製品につき第三者により新たに特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合には,特許権者が特許法上の独占権の対価に見合うものとして当該特許製品に付与したものはもはや残存しない状態となり,もはや特許権者が譲渡した特許製品と同一の製品ということはできない。したがって,このような場合には,特許権者は当該製品について特許権に基づく権利行使をすることが許されるというべきである。これに対して,特許請求の範囲に記載された構成に係る部材であっても,特許発明の本質的部分を構成しない部材につき加工又は交換がされたにとどまる場合には,第1類型に該当するものとして特許権が消尽しないことがあるのは格別,第2類型の観点からは,特許権者が譲渡した特許製品との同一性は失われていないものとして,特許権に基づく権利行使をすることが許されないと解すべきである。
第1類型の該当性
・インク消費後における控訴人製品の状態等
インクは正に消耗部材であるから,控訴人製品のうちインクタンク本体に着目した場合には,インク費消後の控訴人製品にインクを再充填する行為は,インクタンクとしての通常の用法の下における消耗部材の交換に該当することとなる。
・インク費消後の本件インクタンク本体に対する加工等の内容
本件インクタンク本体に洗浄及びインク注入のための穴を開ける工程が含まれていることをもって,消耗部材の交換に該当しないということはできない。
・インクジェットプリンタ用インクの分野におけるリサイクルの状況
インクタンクの利用が1回に限られる旨の認識が社会的に強固な共通認識として形成されているということはできない。
・小括
インク費消後の控訴人製品の本件インクタンク本体にインクを再充填する行為は,特許製品を基準として,当該製品が製品としての効用を終えたかどうかという観点からみた場合には,インクタンクとしての通常の用法の下における消耗部材の交換に該当するし,また,インクタンク本体の利用が当初に充填されたインクの使用に限定されることが,法令等において規定されているものでも,社会的に強固な共通認識として形成されているものでもないから,当初に充填されたインクが費消されたことをもって,特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えたものとなるということはできない。
したがって,本件において,特許権が消尽しない第1類型には該当しないといわざるを得ない。
第2類型の該当性
・本件発明1の内容
輸送時や保管時に,インクタンクがどのような姿勢をとっても,負圧発生部材収納室のインクが過充填となることを防止する必要があり,これが本件発明1において解決すべきものとされた課題である。
本件発明1は,インクタンクの単位体積当たりのインク収容量を増加させ,安定したインク供給を実現するという従来のインクタンクと同様の作用効果を奏しつつ,併せて,従来の技術にみられた開封時のインク漏れという問題を解決するために,@ 負圧発生部材収納室に2個の負圧発生部材を収納し,その界面の毛管力が各負圧発生部材の毛管力よりも高くなるように,これらを相互に圧接させるという構成と,A 一定量のインク,すなわち,液体収納容器がどのような姿勢をとっても,圧接部の界面全体が液体を保持することが可能な量の液体が充填されているという構成を採用することによって,負圧発生部材の界面に空気の移動を妨げる障壁を形成することとした点に,従来のインクタンクにはみられない技術的思想の中核を成す特徴的部分があると認められる。
・小括
被控訴人製品は,控訴人製品中の本件発明1の特許請求の範囲に記載された部材につき丙会社により加工又は交換がされたものであるところ,この部材は本件発明1の本質的部分を構成する部材の一部に当たるから,本件は,第2類型に該当するものとして特許権は消尽せず,控訴人が,被控訴人製品について,本件発明1に係る本件特許権に基づく権利行使をすることは,許されるというべきである。
結論
被控訴人製品については,当初に充填されたインクが費消されたことをもって,特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型)に該当するということはできないが,丙会社によって構成要件H及びKを再充足させる工程により被控訴人製品として製品化されたことで,特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)に該当するから,本件発明1に係る本件特許権は消尽しない。
2.国内販売分の控訴人製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴人製品について物を生産する方法の発明(本件発明10)に係る本件特許権に基づく権利行使をすることの許否
物を生産する方法の発明に係る特許権の消尽
・物を生産する方法の発明の実施
特許法においては,物を生産する方法の発明の実施として,その方法の使用(特許法2条3項2号)と,その方法により生産した物(以下,物を生産する方法の発明に係る方法により生産された物を「成果物」という。)の使用,譲渡等(同項3号)が,規定されている。前者は,方法の発明一般について規定された実施態様であるが,後者は,物を生産する方法の発明に特有の実施態様として規定されたものである。
物を生産する方法の発明に係る特許権の消尽については,上記の各実施態様ごとに分けて検討することが適切である。
・成果物の使用,譲渡等について(特許法2条3項3号)
物を生産する方法の発明に係る方法により生産された物(成果物)については,特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内においてこれを譲渡した場合には,当該成果物については特許権はその目的を達したものとして消尽し,もはや特許権者は,当該特許製品を使用し,譲渡し又は貸し渡す行為等に対し,特許権に基づく権利行使をすることができないというべきである。なぜならば,この場合には,市場における商品の自由な流通を保障すべきこと,特許権者に二重の利得の機会を与える必要がないことといった,物の発明に係る特許権が消尽する実質的な根拠として判例(BBS事件最高裁判決)の挙げる理由が,同様に当てはまるからである。
そして,(ア)当該成果物が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型),又は,(イ) 当該成果物中に特許発明の本質的部分に係る部材が物の構成として存在する場合において,当該部材の全部又は一部につき,第三者により加工又は交換がされたとき(第2類型)には,特許権は消尽せず,特許権者は,当該成果物について特許権に基づく権利行使をすることが許されるものと解するのが相当である。この点については,物の発明に係る特許権の消尽について判示したところがそのまま当てはまるものである。
・方法の使用について(特許法2条3項2号)
特許法2条3項2号の規定する方法の発明の実施行為,すなわち,特許発明に係る方法の使用をする行為については,特許権者が発明の実施行為としての譲渡を行い,その目的物である製品が市場において流通するということが観念できないため,物の発明に係る特許権の消尽についての議論がそのまま当てはまるものではない。しかしながら,次の(ア)及び(イ)の場合には,特許権に基づく権利行使が許されないと解すべきである。
(ア) 物を生産する方法の発明に係る方法により生産される物が,物の発明の対象ともされている場合であって,物を生産する方法の発明が物の発明と別個の技術的思想を含むものではないとき,すなわち,実質的な技術内容は同じであって,特許請求の範囲及び明細書の記載において,同一の発明を,単に物の発明と物を生産する方法の発明として併記したときは,物の発明に係る特許権が消尽するならば,物を生産する方法の発明に係る特許権に基づく権利行使も許されないと解するのが相当である。したがって,物を生産する方法の発明を実施して特許製品を生産するに当たり,その材料として,物の発明に係る特許発明の実施品の使用済み品を用いた場合において,物の発明に係る特許権が消尽するときには,物を生産する方法の発明に係る特許権に基づく権利行使も許されないこととなる。
(イ) また,特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が,特許発明に係る方法の使用にのみ用いる物(特許法101条3号)又はその方法の使用に用いる物(我が国の国内において広く一般に流通しているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの(同条4号)を譲渡した場合において,譲受人ないし転得者がその物を用いて当該方法の発明に係る方法の使用をする行為,及び,その物を用いて特許発明に係る方法により生産した物を使用,譲渡等する行為については,特許権者は,特許権に基づく差止請求権等を行使することは許されないと解するのが相当である。その理由は,@ この場合においても,譲受人は,これらの物,すなわち,専ら特許発明に係る方法により物を生産するために用いられる製造機器,その方法による物の生産に不可欠な原材料等を用いて特許発明に係る方法の使用をすることができることを前提として,特許権者からこれらの物を譲り受けるのであり,転得者も同様であるから,これらの物を用いてその方法の使用をする際に特許権者の許諾を要するということになれば,市場における商品の自由な流通が阻害されることになるし, A 特許権者は,これらの物を譲渡する権利を事実上独占しているのであるから(特許法101条参照),将来の譲受人ないし転得者による特許発明に係る方法の使用に対する対価を含めてこれらの物の譲渡価額を決定することが可能であり,特許発明の公開の代償を確保する機会は保障されているからである(この場合には,特許権者は特許発明の実施品を譲渡するものではなく,また,特許権者の意思のいかんにかかわらず特許権に基づく権利行使をすることは許されないというべきであるが,このような場合を含めて,特許権の「消尽」といい,あるいは「黙示の許諾」というかどうかは,単に表現の問題にすぎない。)。
したがって,物を生産する方法に係る発明においては,特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が,専ら特許発明に係る方法により物を生産するために用いられる製造機器を譲渡したり,その方法による物の生産に不可欠な原材料等を譲渡したりした場合には,譲受人ないし転得者が当該製造機器ないし原材料等を用いて特許発明に係る方法の使用をして物を生産する行為については,特許権者は特許権に基づく差止請求権等を行使することは許されず,当該製造機器ないし原材料等を用いて生産された物について特許権に基づく権利行使をすることも許されないというべきである。
本件についての判断
本件発明10は,本件発明1の構成要件A〜Hを充足する液体収納容器を用意する工程と,本件発明1の構成要件K及びLを充足するように液体を充填する工程とを有することを特徴とする液体収納容器の製造方法の発明である。また,液体の充填に関しては,充填すべき量について,負圧発生部材収納室に,液体収納容器の姿勢によらずに圧接部の界面全体が液体を保持可能な量を充填すべきものとされているものの,充填の方法については,特許請求の範囲に何ら具体的な記載はされておらず,本件明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載によれば,公知の方法を利用することができるとされている。
・成果物の使用,譲渡等について
被控訴人が,本件発明10の成果物としての被控訴人製品を譲渡する行為について,本件発明10に係る本件特許権に基づく権利行使が許されるかどうかについては,物の発明である本件発明1に係る本件特許権が消尽するか否かと同様に検討すべきである。
そうすると,本件発明10の成果物である控訴人製品が,当初に充填されたインクが費消されたことをもって,本件発明10の成果物が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えたものとなる(第1類型)ということはできないが,本件発明10において,2個の負圧発生部材を収納し,その圧接部の界面の毛管力が各負圧発生部材の毛管力よりも高い負圧発生部材収納室を備えた液体収納容器を用意するという工程及び液体収納容器がどのような姿勢をとっても圧接部の界面全体が液体を保持することが可能な量の液体を充填するという工程は発明の本質的部分を構成する工程の一部を成すものであり,その効果は本件発明10の成果物である控訴人製品中の部材(本件発明1の構成要件H及びKを充足する部材)に形を換えて存在するというべきところ,丙会社によって前記工程により被控訴人製品として製品化されたことで,当該部材につき加工又は交換がされた場合(第2類型)に該当するから,控訴人は,本件発明10に係る本件特許権に基づく差止請求権等を行使することが許されるというべきである。
・方法の使用について
本件発明1に係る本件特許権が消尽しない以上,丙会社が本件発明10の技術的範囲に属する方法により生産した成果物である被控訴人製品について,控訴人が本件発明10に係る本件特許権に基づく権利行使をすることは許されるというべきである。
本件発明10は,本件発明1に係る液体収納容器を生産する方法の発明であって,本件発明1と別個の技術的思想を含むものではないところ,本件発明10における「前記負圧発生部材収納室に,前記液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体を充填する第2の液体充填工程」との点は,本件発明10の本質的部分の一つであるから,丙会社がインクの費消された後の控訴人製品(本件インクタンク本体)に上記一定量のインクを充填する行為は,単に控訴人等の販売に係る本件インクタンク本体にインクを再充填する行為というにとどまらず,本件発明10のうち本質的部分に当たる工程を新たに実施するものである。
これらの点を考慮すれば,本件において,控訴人及び控訴人の許諾を受けた者が本件発明10に係る方法を使用してのインクタンクの製造のための製造機器ないし原材料等を販売したということはできないから,控訴人が本件発明10に係る本件特許権に基づく権利行使をすることが許されないということはできない。
<意匠>郵務局長定例記者会見配布資料を、意匠法3条1項2号の「頒布された刊行物」に該当するとし、一方、類否判断については、差異点は、本体側面の面積に占める割合が小さく、全体に占める大きさが小さく、部分的かつ微細な差異であって、看者の注意を引く部分とは認められないとし、面積のウエイトを重視した判決
H17.9.15知財高裁 平成17(行ケ)10134審決取消請求事件
(旧事件番号 東京高裁平成17年(行ケ)第12号)
<判決要旨>
1.頒布された刊行物該当性の判断について
@本件配布資料(郵務局長定例記者会見配布資料)は,平成8年7月8日,郵務局長の局長定例会見において,郵政省が平成8年度から新型郵便ポストが全国に配備されること,新型郵便ポストの形状等の外観,現在のポストからの改善点等を報道機関を通じて国民に周知するため,郵政記者クラブ,飯倉クラブ,郵政省テレコム記者会の各記者クラブ所属の各社に配布されたこと,A上記局長定例会見時における本件配布資料の配布先は,郵政記者クラブに50部,飯倉クラブに13部,郵政省テレコム記者会に13部(合計76部)であったこと,B本件配布資料の記載事項は公開することを目的としており,上記各記者クラブ所属の報道機関以外の記者の取材の申込みに応じて,本件配布資料を交付したり,一般人に対しても電話照会等を通じて特に希望があれば,本件配布資料を交付することが可能であったこと,Cそして現に配布翌日の平成8年7月9日の各新聞に,新型ポストの写真入りでその概要が報道され,また平成8年8月に郵政省広報誌「POST21」(1996年8月号)(郵政弘済会発行)に本件配布資料の外観図と全く同じ外観図が掲載されていることが認められる。
そうすると,本件配布資料は,不特定又は多数の者に対し頒布により公開することを目的として複製された文書であって,現実に社会に頒布されているのであるから,意匠法3条1項2号の「頒布された刊行物」に該当するものと認めるのが相当である。
2.本件登録意匠と甲号意匠との類否判断について
本件登録意匠(登録第1010772号意匠)と甲号意匠を全体として観察すると,@取っ手及び錠前は,いずれも郵便ポスト本体の左側面の奥に位置していること,A取っ手の形態は,縦長の矩形であることで共通し,郵便ポスト本体の側面の面積に占める割合は小さく,差異点@は横寸法及び縦寸法比のわずかな差にすぎないこと,B錠前の形態は,全体的に円形であることで共通し,全体に占める大きさが小さいことが認められ,差異点@に係る取っ手の形状(縦と横の比)及び差異点Aに係る錠前の位置の差異は,いずれも部分的かつ微細な差異であって,看者の注意を引く部分とは認められず,上記差異がもたらす意匠的効果は,両意匠の共通点が醸し出す類似するとの印象を凌駕して,看者に対し全体として異なった美感ないし美的印象を与えるものとは認められない。
【本件登録意匠】
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